top of page

7.高齢者の姿勢と歩行のフォームづくり

更新日:2023年6月25日

運動指導の現場では「朝起きたら腰が痛い」「この前までは膝が痛かったけど今日は腰が痛い」「最近めまいやふらつきがあって診察を受けたけど原因がわからない」などの相談があります。これらの症状を姿勢と歩行改善により軽減できるのでは‥と考え、私は高齢者にパーソナル指導を実践しました。内容は症例報告として平成28年2月に開催された医師会学術集談会で発表しその場で教示を頂き現在でも指導現場で活用しているところです。その内容の概略は以下の通りです。


高齢者の姿勢の特徴は猫背、膝が伸びない、首が曲がって顎が上がる、骨盤が後ろに傾く、腕は肩より前でぶら下がっている。歩行の特徴は歩隔の増大、歩幅の減少、円背、両脚支持時間や下肢交替時間の延長、歩行速度の低下などが高齢者の特徴として挙げられます。

これらの特徴を考慮し運動指導を進めました。


対象者は腰痛と膝関節痛、めまいなどの症状がある80歳代女性です。

トレーニングの効果を検証する為、運動実施前後に姿勢と歩行の評価を行いました。姿勢評価は立位姿勢と立位からの前後屈動作を写真撮影。歩行評価は歩行時のステップ長と一分間あたりの歩数(ケーデンス)の測定。歩行をビデオ撮影して8つの静止画像を作成してフォームを評価しました。

運動前の立位姿勢評価では、頭は右に移動し、左の骨盤を引き上げて、左肩が下げた姿勢でした。立位の前後屈では動作に伴う骨盤の前後の動きがほとんどなく、原因はお尻の筋と太もも裏側の筋の柔軟性の低下と考えられます。歩行フォームの評価は、軽度のねこ背、右脚支持で骨盤は横移動が大きく後方への回転は小さく、骨盤の動きに左右差がみられました。静止画像のフォームでは、歩行時に最も弓なりになる場面の股関節の伸び、前足部(床を押してかかと挙げた時床に触れている部位)の伸びがほとんどなく、かかと接地から片脚で支える場面の体幹の移動の遅れがみられました。この結果、運動プログラムは股関節の柔軟性向上、足の機能改善、体幹強化を目的に作成しました。運動は2か月間、週1回、パーソナル指導を実践しました。

運動実施後の姿勢評価は立位姿勢の変化がみられ立位の前後屈では動作に伴う骨盤の前後の動きが確認されました。歩行の評価はケーデンスが105歩→107歩で変化はみられませんでしたが、ステップ長は64cm→72cm増加し歩行速度も67.2m/分→77.0m/分に改善しました。

歩行フォームは弓なりになる場面できれいな曲線を描くフォームになり、かかと接地から片脚で支える場面の体幹移動の遅れと軽いねこ背も解消されました。これらは股関節や前足部の機能改善によるものと考えられます。そして対象者からは、腰痛や膝関節痛とめまいの発症頻度や痛みの度合いも軽減し、友人から「背中が伸びて歩き方がきれいになったね」と称賛され自信がついたとコメントをもらいました。


歩行は荷重関節である足関節、膝関節、股関節の負担と高度なバランス機能が重要です。荷重関節の不具合や足底部や視覚の機能の低下によってバランス感覚が低下すると、関節痛やめまいふらつき感などの原因が特定できない症状を引き起こすことが考えられます。


今回の検証では、観察による歩行分析(キルステン ゲッツ・ノイマン著2005年)とペリーの歩行分析 -正常歩行と異常歩行-(Jacquelin Perry著, Judith M. Burnfield著2012年)を参考文献にしました。文献によると前方への腕の動きは受動的で、支持脚はかかと接地からかかと、足関節、前足部での「ころがり(ロッカー)機能」が重要なことが述べられてます。腕や脚が能動的から受動的な動きにシフトし足関節と股関節の動きの切り替えしと支持脚の移行と速度が最も早くなるなる場面‥すべて片脚支持の最終場面です。

私は歩行は片脚支持の最終場面が最も重要だと考えます。その場面のフォームはきれいな弓なりの美しい曲線を描いてます。


水中歩行の指導では「前足部で地面を押す」「前足部から胸にかけて曲線(弓形)のフォームを作る」「力は前足部から胸にかけて感じ」「その力は胸から前方に抜けるイメージ」「お尻の筋は硬く」「股関節は伸びやかに」、腕の動きも「腕振りは意識しないで」「胸(胸郭)の動きを感じて」「胸(胸郭)をちょっとだけ回すイメージ」「歩行の腕の役割はバランスと方向性」「大きく振る必要はまったくありません」などを繰り返し伝えます。(ちなみに胸郭の高さには、腹筋群、横隔膜、肩甲骨があるため歩行に限らず運動では配慮すべき高さだと考えてます。)


高齢者はいつまでも歩けること願っています。しかし不安要素が原因で外出の機会が減ったり、運動不足に陥ると徐々に歩かなくなり長期化すると歩けなくなることは自明の理。そうならないようできることを継続し不安要素を取り除くことが極めて重要です。今回ご案内した内容はそれに応えられる運動です。詳しいやり方はKAZUメソッドのレッスンに含まれますので興味のある方は一度体験してみてください。

 
 
 

Kommentare


フォロー

  • Facebook
  • Twitter
  • LinkedIn

©2022 by 健康運動指導士 山田和彦。Wix.com で作成されました。

bottom of page